金属加工現場での負傷事故に学ぶ 中小製造業が備えるべき労災リスクと保険
2026.08.24
金属加工現場での負傷事故に学ぶ
中小製造業が備えるべき労災リスクと保険
事例の概要
2026年8月、近畿地方の金属加工工場で、高齢の男性従業員が右足から出血した状態で倒れているのを同僚が発見しました。 すぐに病院へ搬送されたものの、残念ながら死亡が確認されています。
警察・労働基準監督署が原因を調査中ですが、加工作業中に鋭利な金属片へ接触したことが一因とみられています。
この工場は地域の取引先から加工を請け負う、いわゆる「街の金属加工工場」。 大企業のように安全管理専任者を置けない体制の中で起きた事故であり、同じ規模の中小製造業にとって決して他人事ではありません。
業界に共通するリスク
1. 鋭利な部材・工具を扱う工程の危険性
切断・研磨・プレスなど、金属加工の現場には鋭利な刃物や可動機械が日常的に存在します。 一瞬の接触が大きな裂傷につながることもあり、慣れた作業ほど防護策が後回しになりがちです。
2. 高齢の熟練従業員に頼る現場構造
人手不足の中小製造業では、ベテランの高齢従業員が中心となるケースが多くあります。 しかし、加齢による反応速度・視力・体力の変化は本人も気づきにくく、「長年やってきたから大丈夫」という思い込みがリスクになります。
3. 単独作業・発見の遅れ
夕方や人の少ない時間帯の単独作業は、事故発生時の発見が遅れ、被害が深刻化する恐れがあります。 声かけ・巡回の仕組みが、事故の拡大防止に欠かせません。
損害保険でどう備えるか
労災保険だけでは足りない理由
労働災害が起きた際、まず適用されるのは労災保険です。 しかし、会社が安全配慮義務を怠ったと判断されると、労災保険の給付額を超える損害賠償を遺族から請求される可能性があります。
この上乗せ部分は労災保険の対象外で、会社の自己負担となります。
使用者賠償責任保険(労災上乗せ保険)
この上乗せリスクに備えるのが 使用者賠償責任保険 です。 死亡事故では賠償額が数千万円規模になることもあり、中小企業の経営を揺るがすレベルの負担となり得ます。
「労災に入っているから安心」ではなく、 労災+使用者賠償のセットで備えることが現実的なリスクヘッジです。
保険料と補償のバランス
従業員数・賠償限度額によって保険料は変動します。 すべてを手厚くすると負担が重くなるため、 自社の作業内容・過去の事故傾向を踏まえ、優先度の高いリスクから補償を組み立てることが重要です。
まとめ ― 今すぐ点検したい4つの視点
- 鋭利な部材・工具を扱う工程に、十分な防護策・保護具があるか
- 高齢の熟練従業員の作業内容に、無理や危険が生じていないか
- 単独作業になりやすい時間帯に、声かけ・巡回の仕組みがあるか
- 労災保険に加え、使用者賠償責任保険で上乗せリスクに備えているか
安全対策と保険の両面から備えを見直すことが、 従業員と会社を守る第一歩になります。