ラーメンの神様が泣き虫だった僕に教えてくれたなによりも大切なこと 「お茶の水大勝軒」田内川真介の変えない勇気 北尾トロ(文藝春秋)
2025.05.12

大勝軒系のラーメンが大好きでこの本を読んだというわけではないのですが、
『師につく』という事への興味は、いつも自分の中にあります。
この本では、子供のころから東池袋大勝軒に通い詰めていた田内川少年が、ラーメン屋として生きることを決め、山岸さんと築き上げてきた師弟関係、というか、
田内川さんから山岸師匠への、亡くなった今もずっと続いている「片想い」の話だと思いました。
山岸さんがいなくなった後、田内川さんの人生の岐路、問題、チャンス、いたるところで、「マスター(山岸さん)ならどう考えるか?」という言葉が出てきます。
「それが結局一番間違いが無いから。」ということです。
「真介、おまえだけは味を変えるなよ」
変えないことは、簡単か?
変えることはリスクなのか?
変えないことほど勇気のいる決断は無い。
逆に、変えなくてもお客様が来る店でないと生き残れない。
必死に頑張っているから、変わらないでいられる。変わらない味を作れる。
いろいろぶれそうになるけど、
それでも大きくぶれず、まっすくに歩んでいける。
この本は、お茶の水大勝軒 田野川慎介のノンフィクション作品のようで、
「人生のうえで、生活のうえで、師を持つことの意味」を
とても考えされられるものでした。
迷ったとき、困ったとき、「あの人ならどう考えるだろう?」
自分に、そういう人は、いるでしょうか?
求めているでしょうか?
ラーメン屋さんとしての「恩返し」という意味では、弟子を育てて、継承していくという恩返しが一般的なのかもしれませんが、
「変えないで師の思いをつなぐ」という役割を求める、「恩返し」もあるんだなあ、と思ったのでした。