若者のキャリアアップ教育と、より高まる退職者からの賠償請求リスク
2025.08.01
「育てたのに、すぐ辞めてしまう」
「せっかく育てた若手が、気づけば辞めてしまっている」
そんな声を、最近よく耳にします。
特に中小企業では、Z世代の若手社員の離職率が高まり、現場が疲弊しているという話も少なくありません。
その背景には、大学教育の変化と、若者の価値観のシフトがあるようです。
大学では近年、「キャリア形成」や「自己実現」を重視した教育が進んでいます。
学生たちは「自分らしい働き方」や「成長できる環境」を求めるようになり、企業選びも“ステップアップの場”として捉える傾向が強まっています。
結果として――
- ・転職は前向きな選択肢
- ・我慢よりも、違和感への即応
- ・「合わない」と思えば、早期離職も当然
なにせ大学の先生が、「企業で経験と知識を積んで、次へステップアップしなさい」というのですから、中小企業としてはたまりません!
でも実際に、そんな価値観が、Z世代の中で当たり前になってきているのです。
一方で、中小企業にはこんな現実があります。
- ・教育体制が整っていない
- ・キャリアパスが見えづらい
- ・給与や福利厚生で大手に劣る
- ・「人間関係」や「社風」が離職理由になりやすい
特に大学卒の若手は、サービス業や小規模企業への就職が増えている一方で、3年以内の離職率は34.9%と過去最高水準に近づいています。
「育てても辞める」構造が、中小企業の体力を奪っているのです。
★離職がもたらす“見えないリスク”
離職は単なる人材流出にとどまりません。
時には、退職者からの損害賠償請求や労災トラブルなど、企業にとって予期せぬリスクにつながることもあります。
たとえば――
- 業務中の事故に対して「使用者責任」が問われるケース
- ハラスメントや安全配慮義務違反による訴訟リスク
- 離職後のSNS投稿による風評被害
弊社のお客様でも、実際に退職者から弁護士を通して使用者責任の請求が来たケースがありました。
「営業車の事故で怪我をしたから、慰謝料が欲しい。」
なんにも非が無いのに。請求されたら答えざるを得ない。これが現実です。
こうした事態に備えるために、使用者賠償責任保険の導入が注目されています。
★使用者賠償責任保険とは?
これは、企業が従業員に対して負う法的責任(使用者責任)に備える保険です。
具体的には、以下のようなケースをカバーします。
- ・業務中の事故で従業員が負傷し、企業に損害賠償を求めた場合
- ・ハラスメントや安全配慮義務違反による精神的損害への請求
- ・裁判費用や示談金などの支払い負担
中小企業にとっては、**経営の持続性を守る“盾”**とも言える存在です。
また、制度や保険で守ることも大切ですが、根本的な離職防止には“人との関わり方”が欠かせません。
- ・“寄り添い”のコミュニケーション
- ・小さな成功体験の積み重ね
- ・キャリアの“見える化”
- ・地域や業界での育成の仕組みづくり
Z世代は、「自分を見てくれているか」「成長できるか」に敏感です。
だからこそ、**“人としての関わり方”**が、離職防止の鍵になるのかもしれません。
若者が辞めてしまうことは、本当に悲しいことです。
「社員さんに授業料100万円かけて資格を取らせたとたんに、大手に引き抜かれた。」なんて、泣きたくなります。
でも、彼らが「もっと成長したい」と願っているなら、それは希望でもあります。
立派な人を育てて、社会に送り出す。それも企業の役割かもしれません。
中小企業が「育てる場」としての魅力を取り戻すために、
今こそ“人に向き合う経営”と“リスクに備える責任”の両輪が求められているのではないでしょうか。