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千葉県東金市の工場湯釜転落事故から安全管理を考える

2025.10.20

2024年8月に発生したイソベ商会の死亡事故は、労働安全衛生法違反の疑いで書類送検に至る重大な労災でした。

大変残念で、お悔やみを申し上げる出来事です。

この記事では事故の概要と、企業に求められる安全管理の本質について考えてみたいと思います。

 

 

●イソベ商会で起きた死亡事故の概要
2024年8月17日、千葉県八街市にある木材・木製品製造会社「イソベ商会」のツキ板工場で、70代の男性作業員が作業中に湯釜へ転落し死亡する事故が発生しました。湯釜は木材を柔らかく加工しやすくするための設備で、長さ約6.8メートル、幅約2.1メートル、深さ約1.2メートル。事故当時の湯の温度は50~60度と推定されています。
作業員は高さ約0.8メートルの作業スペースで天井クレーンを使って木材を湯釜に投入する作業をしていたとされ、転落防止措置が講じられていなかった可能性が問題視されました。2025年10月、東金労働基準監督署は労働安全衛生法違反の疑いで、イソベ商会と84歳の代表取締役を千葉地検に書類送検しました。(2025.10.17千葉日報より)

 

 

●なぜ事故は防げなかったのか?
事故の背景には、以下のような安全管理上の課題が見受けられます。
• 高齢作業員への配慮不足:70代という年齢を考慮すれば、身体的な負担や反応速度の低下を前提にした安全対策が必要でした。
• 転落防止措置の未実施:湯釜という危険な設備に対して、手すりや安全柵、落下防止ネットなどの物理的対策がなかったのかどうか。
• 作業環境の設計不備:高さ0.8メートルの作業台とクレーン操作という複雑な作業が同時に求められる状況は、転落リスクを高めます。

 

 

おそらく、「ふつうはそんなことはありえない」ということが起きたのでしょう。

でも、その「ふつう」が、これからの高齢者社会ではもう通用しないという事なのではないでしょうか。

 

 

●企業に求められる安全管理とは
この事故は、単なる「不注意」ではなく、企業の安全文化そのものが問われる事例です。特に中小企業では、以下のような取り組みが求められます。
• リスクアセスメントの徹底:作業前に危険箇所を洗い出し、対策を講じることが基本です。
• 高齢者や未経験者への配慮:年齢や経験に応じた作業配置と教育が不可欠です。
• 安全設備の整備と点検:物理的な安全対策は、事故を未然に防ぐ最も確実な手段です。
• 現場の声を聞く仕組み:作業員が危険を感じたときに、すぐに改善提案できる風通しの良い職場づくりが重要です。

 

 

●事故を「教訓」に変えるために
イソベ商会の事故は、どの企業にも起こり得る現場の危険を浮き彫りにしました。

特に、今の時代では、全ての業種で高齢者比率が高まっています。

私自身も先日、わずかに蛇行しているタクシーを見かけて、ドライバーを見ると、かなり高齢のドライバーの方でした。

今でもタクシーのドライバーの方は「プロフェッショナル」だと思っていますが、

そんな個人的な正義を振りかざしても、もしぶつかってしまえば事故は事故です。「絶対~なはずだ」という思い込みでは自分を守れない時代になってきたことを感じます。

再度お伝えしますが、私も興味本位でこの記事を書いているわけではありません。被害者のご家族や企業様の悲しさ、苦しさ、辛さがどれほどのものか、察するに堪えません。

 

安全管理は「コスト」ではなく「信頼の投資」です。地域社会の一員として、企業は従業員の命と健康を守る責任があります。
このような事故を風化させず、同様の悲劇を繰り返さないために、私たち一人ひとりが「安全とは何か」を問い直す必要があると感じた出来事でした。

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